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死刑執行人。
俺が眠い目をこすり、タオルケットをめくってコンクリート打ちっぱなしの簡素な宿舎で目が覚めたその日は、蒸し暑いにも程がある汗ばむ真夏の朝だった。
そして今は正午過ぎ、俺が仕事をしている拘置所の棟の中は、エアコンが効いてはいるが、外に出れば汗ばむどころか身をも焦がしてしまう陽射しだろう。
格子の、窓辺から差し込む光を浴びて気を取り戻した俺は、肩をバシンと叩く同僚の手に、外でさんざめくミンミン蝉の耳障りな大合唱の痛さよりも、彼から与えられた体を包む仄かな痺れに頭の機能が追いつかず、まるで夢の底にいる様な気分である。
「おいお前さ、昼間っからぼやぼやすんなよ。しっかりしろよ」
ニカッと笑う同じ年齢の看守の男は、さらにパタパタ肩を打ち、「さあ行くか」といってコンクリートに囲まれた廊下をゆっくり歩き始めた。
「お前さ、死刑執行の仕事、今回がはじめてじゃないだろう?」
「え、…ああ。法律が変わってから何度目かな。もう忘れちまったが十回、いや十二回だったかな?」
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