死刑執行人。

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 紺色の、遠くから見れば警察官に見間違えてしまいそうな制服の右腕を上げて眺めみて、それから歩くために腕を前に出して後ろに引いた。左の足は、もちろん前に出ている。  十年前、この国では死刑制度に関する法律が変わった。  それまで行われていた薬液の静脈注入による死刑は見直され、新たに囚人を縊死(いし)させる、、即ち首つり方式に変更されることやなより、これまで、数十人が刑の執行に関わるという非効率な体勢を見直すことで人員と諸経費の大幅削減に成功。お陰で今では死刑に直接かかわるのは人数を僅か数人までに圧縮、そして実際に執行を行う人員をたった一人のみと効率化したのだ。  まあ、つまり。その一人と云うのは〝直接執行人〟である俺な訳なのだが。。 「高給取りはいいなぁ~!羨ましいなぁ~!」 「あん?代わってやろうか?」 「え?やだよ♪オレさ、あんなムズイ試験に通る自信なんかねぇ~し、それに半年ごとの資格チェック試験とか精神安定の鑑定なんたらとか、絶対やりたくねぇ~もん♪」 「そうかい」 「そうさ、めんどくさそうだしさ♪」 「まあ、そうかもな」  ベロを出しておどけ、首を盛んに振ってイヤイヤする同僚を横目に見ながら俺は、ちょいとした優越感にひとり浸っていた。  なんせ隣の同僚の年棒の、三倍近くも俺は稼いでいるんだからな。 「で、肝心の囚人は先に“あそこ“に入っているのか?」     
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