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「あっつ……」
縁側から身を乗り出せば、ジリジリと太陽の光に肌を焼かれるようで思わず目を細めた。じわりと汗が滲んだように感じるのは、もしかすると湿度の高い空気のせいかもしれない。玄関から取ってきたスニーカーを放ると、コンクリートに当たって鈍い音をたてた。その音を聞き付けてか、エプロン姿の母さんが廊下へ顔を覗かせる。
「あんた今日も手伝いに行くの?」
「うん、じいちゃんにもそう言ったから」
無造作に転がった靴に両足を突っ込んで、靴紐をぐっと結んでから勢いをつけて立ち上がる。ついでに2、3度爪先で地面を蹴って、簡単にはズレないことを確認した。
最後に軽く跳んでみる。よし、完璧。
「暗くなる前に帰ってきなさいよ」
「分かってる!」
家の中から聞こえた声に、声を張り上げるようにして返事を投げて、俺はどこかから蝉の声が聞こえる炎天下へと飛び出した。
中学最後の夏休み。テレビで連日、真夏日だ最高気温だと騒いでいるうちにカレンダーを一枚めくった。
今年も、祭の準備が始まる。
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