葉月の友

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俺たちが住んでいるこの小さな町では毎年、大々的に夏祭りをする。それこそ、ここが村であった頃から続いている伝統行事ってやつだ。月の始めから1ヶ月近くもの時間をかけて、町の大人たちが櫓を組んだり、みんなで神楽の練習をしたりする。  学校が夏休みになっているから、こどもたちがじいちゃんばあちゃんの家に遊びに来る。だから田舎で年よりの方が多いこの町は、このひと月の間が一番賑やかになるのだ。    物心つく前からずっとここで育った俺は、じいちゃんが長年櫓を組む責任者をつとめていることもあって、気がつけば毎年この時期になると神社に入り浸るようになった。  そしてそこにはいつも、大工仕事の音や神楽の鈴の音に惹かれた同世代のこどもが集まってきて。一緒に夕方まで手伝いをしたり、遊び呆けたりして、それが楽しくて仕方がなかった。というのは俺が小学生の頃の話。  今ではみんなも部活や勉強で忙しいのか、そもそも夏にこの町へ遊びに来ることをやめてしまったのか、同じ年くらいのやつが神社へ遊びに来ることはほとんどなくなってしまった。──たった一人を除いて。    「彼」は必ず夏になると俺の目の前に現れた。そして祭が終わるとまた次の夏まで会うことはなくなる。彼は俺にとって毎年ひと月限りの友人だ。
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