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「五年前に、あなたに言われた言葉を、俺は今でも忘れられません。すごくショックで、辛かった」
「僕は嘘は口にしてないつもりだけど？」
その言葉に百瀬は一瞬顔をしかめ、やがて小さく「はい」と答えて頷いた。決して認めたくはなくて、でもとっくに気付いていたことだ。自分は、九鬼が納得してくれるような素質も実力も持っていなかった。
「……だけど同じく五年前に、俺はあなたに酷い言葉を投げ付けた。自分の無力を理解できなくて、混乱していた、余裕がなかった。それでは済まされない言葉でした」
九鬼にちやほやされて舞い上がっていた自分への苛立ちでもあったし、自分が偏見の目で見られることから逃げた弱さでもあった。
「もう一度九鬼さんに会うことがあったら、謝りたかった。……本当にごめんなさい」
百瀬は深く頭を下げた。
「それで？ っていうかそれって自分の罪悪感を軽くしたいだけじゃないの？ そういうの自己満足って言うんだよ」
優しくはない九鬼の言葉に百瀬はゆっくりと顔を上げた。
「確かにそうなのかもしれません。……それに俺はそのことを理由にしてあなたに関わりたかっただけなのかもしれないです」
九鬼の顔から薄笑いが消える。
「過去にあなたに会った時、俺はあなたから好意を感じました。キスされて……びっくりしたけど、好かれてるんだって自惚れました。それが翌日にはボロクソに言われて、勝手に裏切られた気持ちになったんです」
舞い上がっていい気になって、叩き落とされた惨めな自分。
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