第3章

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「休みなんだ。でも僕は仕事だから悪いけどもう起きてね」 「はい」 「シャワー浴びるでしょ? 昨日、寝てる間に軽くは拭いといたけど?」 「っ!」  百瀬は絶句して九鬼を凝視した。見る見るうちに素肌が赤く染まる。 「んふふ、いい反応」  妖しく笑って、九鬼は先にベッドから降りた。 (軽く拭いたって……どこからどこまで?)  体の隅々まで見られたのだろうか。一体どこを触られたのか。そんなことを悶々と考えながらシャワーを浴びてリビングに入ると、キッチンから九鬼の声がした。 「朝メシ食べる? コーヒーもあるけど」 「えっ、食べます!」  百瀬は大きな声で即答した。まん丸にした目を輝かせる百瀬に、九鬼は苦笑する。 「そんなリアクションされるとちょっと申しわけない感じだなぁ。朝メシっていってもパン焼いただけだし」  百瀬は言葉もなくぶんぶんと首を横に振った。内容なんてどうでも良かった。九鬼が自分の為に用意してくれたことに意味があるのだ。 「僕、料理はからきしだからねぇ」 「じゃあ、あの、今度俺が作る!」 「え?」 「あ、いや……あの……なんていうかお礼? みたいな感じです」  咄嗟の勢いで言ってしまったが、百瀬はすぐ我に返って恥ずかしくなった。図々しいと思われるだろうか。一度寝たくらいで調子に乗るなと鼻で笑われるだろうか。……それでも自分から行かなければ、九鬼との関係は終わってしまう。体の関係ができたからといって、勘違いをしてはいけない。これは極めて可能性の低いひたすら一方的な片想いなのだ。
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