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「明後日の雑誌取材の時刻変更の件は俺が電話確認しておきます。ドラマ現場への差し入れの手配はもう済んでます」
佐木が何かを言う前に百瀬は続けた。
「佐木さん。なんの為に俺がいるんですか? 『今日は長丁場ですから、しっかりご飯食べてきてください』。さっき佐木さんが俺に言った言葉です」
少しだけ怒ったように言うと、佐木は驚いたような表情を浮かべて、やがて嬉しそうに笑った。
「それじゃあ、お言葉に甘えてちょっとだけ抜けさせてもらいますね」
佐木の返答に百瀬はほっと息を吐き、「はい」と頷いた。
百瀬が貴島の現場に同行できる期間は限られている。その間に少しでも貴島や佐木を助けたいし、自分も成長したい。佐木はマネージャーとしてだけでなく、人間としても見習うべきところがたくさんある。傍にいればそれに近付けると単純に思っている訳ではないが、一緒に仕事をさせてもらえる機会はとても貴重なものだと百瀬は感じていた。
「百瀬くんがいてくれて、助かります」
ふんわりと笑みを浮かべた佐木にそんなことを言われて、思わず頬を赤らめた。佐木の言葉が嬉しくて、舞い上がってしまいそうになる。
(こんなことくらいで浮かれるな。仕事に集中!)
佐木を休憩に送り出したあと、百瀬は心の中で自らを叱責した。
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