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「シャワーは?」
「……浴びたい」
九鬼の問いに答えたものの、体が怠くてなかなか行動に移せない。気を抜けば再びシーツの上に突っ伏してしまいそうになる。
「眠い? 明日にすれば?」
「でも……」
汗や直前の行為の名残で汚れが気になる。はっきり口には出せず黙り込むと、九鬼は微笑を浮かべた。
「体、拭いたげようか?」
「えっ」
九鬼の言葉に思わず眠気が飛ぶ。
「まあ、疲れてるところにさらに疲れさせたの、僕だしね」
九鬼は意味深な視線を百瀬に向けてベッドから立ち上がった。
「ちょっと待ってて」
赤くなった百瀬にそう言い置いて、九鬼は寝室を出ていった。
九鬼の提案を即座に『嬉しい』と思ったが、すぐに照れ臭さが上回る。九鬼に触れられるのが嫌な訳がないし、代償だとしても自分を労わるような行為は嬉しくて堪らない。けれどやはり恥ずかしいものは恥ずかしかった。
ベッドの上で一人悶々としていると、洗面器を持った九鬼が戻ってくる。
「あの、九鬼さん」
「んー?」
サイドテーブルに洗面器を置いた九鬼は、百瀬の背後に回り込んで腰を下ろした。
「俺、自分で……」
背後を振り向くと、拗ねたような九鬼と目が合う。
「僕に拭かれたくないの? 疲れてる百瀬くんを少しでも癒してあげたいなって思ったのになぁ」
そんなことを言われてしまえば、百瀬に拒否権はない。無言で正面に向き直り姿勢を正した。
「ん、イイ子」
受け入れ体勢の百瀬に、九鬼は首筋に音を立ててキスを落とす。
「っ」
その感触にびくりと肩を揺らすと、背後でくぐもった笑い声が聞こえた。
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