第4章

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「明日は仕事何時から?」 「十時だから……久々にちょっとゆっくりできる」 「十時って言っても、どうせ帰りは午前様でしょう? ここのところずっとハードだねぇ」  会話をしながらも、体力の限界ですぐに睡魔に襲われた。だけどもっと九鬼と話していたくて、百瀬はそれに抗うように口を開いた。 「しんどいのはしんどいけど、今は仕事頑張りたいから、いい」 「ふーん?」  九鬼は相槌を打ちながら、ぽんぽんと一定のリズムで百瀬の背を叩く。寝かしつけられている子どものようで照れ臭かったが、嫌ではなかった。 「……佐木さんみたいになりたいんだ」  段々と思考が覚束なくなってきて、話す内容が取り留めなくなってくる。 「隣に寄り添って、背中を支えることも、そっと押すこともできる人」 「へえ」 「今は足元にも及ばないけど、いつか届くように頑張りたい」  いつもよりゆったりとした口調でそう告げると、不意に大きな手のひらが百瀬の頭を撫でた。 「頑張るのはいいことだね。モモちゃんはイイコ、イイコ」  おどけたような口調とその仕草に、百瀬の胸がぎゅっと締め付けられる。九鬼にとってはただのスキンシップやからかいなのかもしれない。だけど百瀬はそんな何気ないことで涙が出そうになる。 (もうペット扱いでもなんでもいい。ずっと傍にいれたらいいのに)  そんな思考が浮かんで、感情が込み上げて、本当に泣きそうになった。百瀬はそれを誤魔化すように他の話題を探した。
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