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(ちょっとは純粋に俺のこと心配してくれてるって思っていいのかな)
百瀬の中で期待が滲みそうになった時、次に続いた言葉がそれを打ち砕く。
「君がヘバると佐木くんも心配しちゃうんじゃない?」
百瀬は目を見開き、そのまま固まった。体だけではなく、思考も、心も。
「百瀬くん?」
百瀬の反応に、九鬼は怪訝そうな顔つきになる。
大丈夫、なんでもない。そう答えたいのにそれができない。麻痺していた感情が、じわじわと広がっていきそうな気配に、百瀬はきつく瞼を閉じる。湧いてくる感情には見ない振りをしてやり過ごそうとした。それでも急激な焦りと恐怖が襲ってきて、百瀬は縋るように目の前の男に手を伸ばした。
「百、っ……ん」
背伸びをして、九鬼の首に腕を回して思い切り引き寄せた。強引に仕掛けた口付けは、拒まれることなく受け止められる。唇を押しつけ、差し込んだ舌に九鬼のそれが絡まる。吸われ、軽く歯で扱かれて、甘い声を上げた。
「ふぁ、……ん、ぅ」
疼く腰を抱き寄せられて、下腹部に熱が集中する。
「なぁに。モモちゃんったら、お食事よりお風呂よりワタシなの?」
唇を解き、まだ吐息が触れ合う距離で九鬼が笑う。
九鬼の軽口に上手く反応できず、百瀬は黙ったままでいた。すると九鬼はふっと短い息を吐いてもう一度笑った。
「どうしたの? エッチな気分?」
百瀬は少し迷って、「うん」と答えた。九鬼はそれに意外そうな顔をする。だけどやがて、「そっか。じゃ、しよっか」と返して、百瀬の手を引いて寝室へと歩きだした。
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