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一週間くらいしてから、あの女性と会うことができた。
その日も玄関から一歩外へ出ると、日照りがひどいものだった。まるでずっと風呂に入っているかのようだった。あまりの暑さのせいか、日曜日なのに表には誰もいない、蝉の鳴き声も心なしか小さいように感じた。
あの女性に会えるかどうか自信もなかった。
僕の家は、車がやっと対向できる道の前に建っていた。舗装もまばらで、周りを見渡せば、田畑や遠くの山しか見えない。
遠くの陽炎に向かって歩き出すと、すぐに汗をかき始めた。ここは地獄より暑い。普段外で遊ばない僕だ、もう五分ほど歩いたら、くたくたになってしまった。
人っ子一人いない道路を歩くと、バス停があった。僕が普段小学校に通う時に使っているバス停だった。掠れた時刻表は、バスが一時間に一本しか来ないことを告げていた。
思わず、錆びたベンチに腰掛けた、もう歩けなかった。けれどもベンチは直射日光にさらされ、まるで鉄板のように熱かった。水筒か何かを持って外へ出なかったのを後悔した。小銭はあるが、バスは来ない。空の上で、蝉の鳴き声に紛れ、飛行機のジェット音がした。
遠くの方から、小さく足音が聞こえる。
ベンチから立ち、道路の両側を眺めた。積乱雲のない方、陽炎にかぶさるように、誰かが歩いてくるのが見えた。あの人だ、瞬時にそう思った。舗装されていない砂利道の向こう、煤けた色の中で際立つ、太陽の光を反射した白色が見えた。
僕は駆け出した。あの女性だ。
「おねえさん!」
思わず声を出していた。
バス停から離れ、より近くに駆け寄ると、はっきり彼女だと分かった。彼女はひどい日照りの中、日傘も差さず、大きなカメラを首から下げていた。
「こんにちは」
「また会いましたね」
彼女は、微かにラムネの香りを漂わせていた。透き通るような白色のワンピースは、汚れひとつない。真っ黒な髪の毛は肩まで伸び、時折吹く風にたなびいて、まるで黒い帯のようだった。女性にしては背が高い。
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