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外は夏の太陽が容赦なく照りつけている。澄んだ青い空に真っ白な入道雲。鳴きわめく蝉の声。
汗だくになりながら、今か今かとタクシーの到着を待っていると、お父さんも家から出て来た。
「僕も待ちきれないから、外で待とうかな」
そう言って優しく微笑んだ。
冬彦。
それがお父さんの名前。
12月生まれ、冬生まれ。
冬の陽だまりのように優しくて穏やかなお父さん。
2人で太陽に照りつけられながら待つこと10分、ようやく1台のタクシーが家の前に停まった。
ドアが開き、長い黒髪が綺麗な女性が、大きなかごを抱えて降りて来る。
「雪子おばちゃん!」
そう言って私は駆け寄った。
「アキ、久しぶりね。あら、制服似合ってるわね。もう中学生なのねぇ。あら、また背が伸びたんじゃない?」
久しぶりに会う雪子おばちゃんは、私の成長ぶりに興味津々のようだったが、私はそれどころではない。
「うん、そうかも。ねぇ、そんなことより」
「ふふ。わかってるわよ。はい」
そう言って、雪子おばちゃんは抱えていた大きなかごを私に手渡した。
かごには布がかけられている。
私はかごをそっと地面に置いて、布をめくる。
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