夏が来た日

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するとそこには、垂れた大きな耳にふわふわの尻尾、薄茶色の毛に真っ黒な瞳の小さな仔犬がいた。 「可愛い!!!」 「アキ、あんまり大きな声を出したらびっくりしちゃうよ」 お父さんが近寄って来てかごを覗き込む。 「ほんとだ。とっても可愛いね。お義姉さん、今日はありがとうございます」 「ううん。フユくんとアキに久しぶりに会えて嬉しいわ。それに、新しい家族が増えること、きっとハルも喜んでると思う」 「そうですね」 春恵。 4月生まれ、春生まれの、私のお母さんの名前。 満開に咲き誇る春の花々のように綺麗で可愛らしい、いつも笑顔のお母さん......は、3年前、私が小学4年生の時に病気で天国に行ってしまった。 「ナツ。ナツー」 私がかごの中の仔犬に向かって呼びかけていると 「あら、アキ。もう名前決めてたの?」 雪子おばちゃんが、優しくかごから仔犬を抱え出して、私に抱かせてくれた。 仔犬は真っ黒な瞳を潤ませて、少し不安そうな顔で私を見上げている。 お父さんとお母さんはよく、私の弟か妹はきっと夏生まれだろうから、そしたら『ナツ』とつけようね、そしたら我が家に四季が揃うね、と言って笑っていた。
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