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「兄さん――」
開かれたままの目がみるみるうちに潤んでゆく。
「オレも……、…オレも、離れないよ、絶対に」
明良も修一の目をまっすぐに見つめて告げると、明良の頬を包む修一の手のひらに、小鳥のようなキスをした。
可憐なその仕草に胸を掴まれ、頼りない身体を腕の中にすっぽりと収めると、言葉に尽くせぬほどの愛おしさがまたこみ上げてくる。
もう、この気持ちを隠さなくてもいい。離れなくてもいいのだ。
そう思った瞬間、深い安堵の溜め息が零れた。
満たされた思いのまま目を閉じると、あの遠い日の日蝕が、目の裏に蘇った。
だが眩い黄金の光に包まれるあの夢を、修一が再び見ることはないだろう。
この日蝕が終わることは二度とないのだから。
長い時の隔たりを超えて、再び巡りあった月と太陽は、今、完全に互いを捕えたのだ。
【了】
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