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「修一に会いに来たんでしょ」
まっすぐに見据えて言うと、明良は戸惑ったように瞳を揺らした。美紗緒はあえて目を逸らさなかった。知っているのだと暗に告げる。明良は無理やりに笑みを作り、小さく頷いた。
「久しぶりに、兄さんが泳ぐの見たくて。見学してもいいかな」
美紗緒の挑発を曖昧にかわす従弟にまた苛立ちがこみ上げたが、不思議そうに見守る関口の存在もあって、美紗緒はそれ以上追いつめるのをやめた。
「修一には週に一度ボランティアで、金曜か土曜の、どっちか都合のつく方で指導をしてもらってるんだ。今日はキッズクラスで十一時からだから、多分もうすぐ来るよ」
「美紗緒さん」
競泳水着姿の青年が入ってきて、明良たちの姿に足を止める。
「あ、お客さんですか」
「うん、従弟の明良。で、こちらが、」
「関口です! お邪魔してます!」
関口が勢いよく挨拶すると、青年も気圧されたように頭を下げた。
「こっちはインストラクターの西崎君」
「どうも」
それから西崎は明良の顔をマジマジと見て、感嘆の溜め息をつく。
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