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「へえ、さすが美紗緒さんの従弟ですね。ん、ってことは、澤野さんの?」
「そう、弟」
「へえ……」
西崎に不躾なまでに見つめられて、明良は微かに怯えたような目をした。
見た目は爽やかな好青年といった感じだが、その実、粘着質で、我の強い西崎の本質を、一瞬のうちに見抜いたのかもしれない。
「美形一族なんですねぇ。こういうのを眼福って言うのかなぁ」
「馬鹿なこと言ってないで、準備しなさいよ」
「はいはい。あれ、そのカメラ。もしかして何かの撮影で来た? フロントで言えば許可証貰えるよ。あ、浅香さん、この方たち撮影希望ですって」
「いえ! これは持ち歩いてるだけで」
明良が恐縮するのも気にせず、西崎は控室の前を通った中年の女性に声をかけた。
「あら、お客さま?」
浅香と呼ばれたポロシャツ姿の人の良さそうなスタッフが入ってくる。美紗緒は仕方なく同じ紹介を繰り返した。
「まあ、澤野君の、可愛いわねぇ。大学生?」
「はい」
「そうだ、浅香さん、広報の写真撮って貰いましょうよ。HP新しくするんですよね」
「ああ、そうね、お願いできるかしら」
「はい、是非!」
関口が喜び勇んで頷く。
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