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「あ~あ、なんだアイツ。愛想ないね。喧嘩でもしてんの?」 「いや、…そんな」  明良が力なく首を振る。傷ついた様子が憐れだったが、一方でそれを愉しむ自分もいた。 「……兄さんは、美紗緒姉ちゃんのトコにもよく行くの」  遠慮がちながら勘繰る言葉が気に障って、美紗緒は意地の悪い気分になる。 「来るよ。ここの練習が終わった後にね。私も修一の家によく行ってるし」 「え、」 「仕事忙しいみたいだからさ、たまに食事作ったり、掃除したり、晩酌の相手とかもさせられてさ、介抱するのも大変だよ」  軽口めいた言葉に、修一との親密さを匂わせる。  明良は顔を強張らせて、そう、と呟いた。  自分の言葉ではっきりと相手が傷つくのは歪んだ悦びだった。美紗緒はそのあとも修一のそばで楽しげに振る舞った。そうすればするほど、明良のファインダーが修一を熱く捉えるのが判った。
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