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 あれから六年。ただ一度きりの交わりは、今も鮮やかに修一の身を苛む。  あの晩のように明良は知らない男の腕の中で乱れたというのか。あの白い肌を無防備に晒し、屈辱と快感のうちに泣き濡れたのだろうか。  あの男はそれをどれだけ貪欲に貪り、どれほどその淫乱さを楽しんだのだろう。 「――クソッッッ!!」  両拳で思い切りテーブルを叩きつける。猛烈な怒りと嫉妬に、呼吸すら困難になる。  だがこうなることが予想できなかった訳じゃない。ゲイであれば、明良を前にして冷静でいられるとは思えなかった。  それでもネコである吉川を選んだのは、明良に手を出す確率が低かったからだ。  自分の往生際の悪さに呆れる。吉川の仕打ちは、修一の生ぬるい覚悟を嘲笑うかのようだった。  どんなに望んでも再び明良を抱くことは許されない。明良を愛することはもっと許されない。  たとえ今回のことがなかったとしても、明良はいずれ自分を諦め、他の誰かを求めるだろう。自分ではない誰かの腕に抱かれ、その力強い抱擁に安息を見出すだろう。  それが最善の道なのだと信じたからこそ、明良を突き放す覚悟をしたのではなかったのか。   けれど心は理屈に従わない。  断ち切るはずだった悪夢は、これまで以上に修一を苛むだろう。そして今度こそ永遠に醒めることはないのだ――。
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