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「うわぁ…………っ!」
花火が、咲いていた。
森の中、ぽっかりと開いた穴。
何にも阻害されず、
堂々と、咲き誇っていた。
「ここ、穴場だったんだね」
女の子からの返事は無い。
けれど、ぎゅっと握る女の子の手が、少しだけ、強くなった。
僕は、見惚れる。
赤。緑。青。紫。ピンク。オレンジ。
炎色反応による、色とりどりの光。
殺戮の為に生まれた火薬で作られた、人の心を動かす光。
「ここに連れて来てくれてありがとう」
「ん」
「まさかこんな場所があるなんて思いもしなかった」
「ん」
「ぬいぐるみ、大切にしてくれると嬉しいな」
「ん」
「…お母さんが、私達は元気でやっているって、
…忘れずに前に進んでいくって伝えてくれって、言ってたよ。ユウヒちゃん」
「…………ん」
前に、小学校の課題で調べた事がある。
かつてこの町があった地域は、天災や疫病が多かったらしい。
その死者の魂を慰める為に、このお祭りが始まったそうだ。
そして、死者が紛れ込む余地を与える為に、生者もお面を着けて顔を隠す事が必須とされた。
死者が紛れ込んでも、分からなくさせる為に。
死者が、心置きなく楽しめる様に。
だから、このお祭りの名前は、慰魂祭。
魂を慰める、お祭り。
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