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「それじゃあね、リョウ君。
私の事、絶対に忘れないでね」
伸ばした手は、消えていく光の粒子を掴む事すら出来なかった。
足ががくんと崩れ、地面に体が叩き付けられる。
体が、土塗れになって。
土ごと、手を握り締める。
…ちりんと、
手の中から、鈴の音が聞こえた。
手の中を見る。
団子になり、ほろほろと崩れていく土の塊、その中に、
ユウヒちゃんが大切にしていた、お祖父ちゃんからの贈り物が、
…誘拐される直前までランドセルに着けていた鈴が、あった。
土を掘る。
道具なんか無い。
手で、がむしゃらに土を掘る。
もう何年も耕されていない土だ、直ぐに指先が痛み出す。
それでも、がりがりと堀り進める。
爪からとてつもない違和感と、痛みが伝わる。
多分、爪が剥がれたんだ。
それでも、堀り進めて、
がりがり、がりがり、掘り進めて、
…指先が、何かに当たる。
大きな、ボール大の何か。
土を優しく堀り、指先に当たった何かを土の中から取り出して、土を払う。
ドーーーーンと、一際大きな花火が、それを照らした。
「…………おかえり、ユウヒちゃん」
涙が、頭蓋骨に落ちる。
そうして僕は、
十一年振りに、ユウヒちゃんと再会する事が出来たんだ。
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