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…そんなユウヒちゃんは、今から十一年前の、小学五年生の夏、忽然と姿を消しました。
その時その光景を見た男の子の話では、ユウヒちゃんは登校中に、見ず知らずの男に誘拐されてしまったそうです。
警察も、町の人達も、懸命に、血眼になってユウヒちゃんを探しました。
…やがて、大切にしていた鈴が無くなり、血塗れになったユウヒちゃんのランドセルが、両親の元に送られて来て。
ユウヒちゃんが誘拐されてから、数日後。
ユウヒちゃんが誘拐された状況を見ていた男の子の証言によって、ユウヒちゃんを誘拐した犯人が捕まりました。
「反抗されたから殺して埋めた」
捕まった男は、言いました。
その男も、どこに埋めたのか告げぬまま、獄中で自殺し。
…今もまだ、ユウヒちゃんの遺体は、見付かっていないそうです。
翌日。
段ボールが山積みになり、妙に片付けられた、ユウヒちゃんの実家。
ユウヒちゃんの写真が立て掛けられた仏壇に線香をあげて、手を合わせる。
「立派になりましたね、リョウ君」
ユウヒちゃんのお母さんの声がする。
見ればユウヒちゃんのお母さんは柔らかい微笑みを浮かべながら、僕の為に麦茶を用意してくれていた。
「どうぞ、飲んで下さい」
「あ、どうかお気になさらないで下さい」
「良いんですよ。
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