慰魂祭

7/14

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「リョウ君」  ユウヒちゃんのお母さんの声が聞こえた。  優しい、声だ。  顔を上げる。  微笑んでいた。  ユウヒちゃんのお母さんは、微笑んでいたんだ。 「…確かに、貴方を恨んでいた時期もありました。  なんでユウヒなんだろう。  近くにいたリョウ君でも良いじゃないか…って。  …でもリョウ君は、犯人の逮捕に協力してくれたじゃないですか」  …確かに僕は、警察に犯人の情報を提供した。  その情報があったから犯人を逮捕出来たと、後に警察の人から聞いた。 「リョウ君は今の今まで、ずっと…ずっと苦しんでいたじゃないですか。  …リョウ君は、もう罰を受けています。  それに本当に罰を受けなければならない人は捕まり、既に死んでいます。  だから、リョウ君が苦しむ理由は、もう無いんですよ。  きっと夫も、そう言うと思います」  ユウヒちゃんのお母さんは微笑み、僕の頭を撫でる。  温かく、優しい手。 「もしリョウ君がまたユウヒに会う事が出来たのなら、私達は元気でやっていると、  …貴方の事を忘れずに前に進んでいくと、伝えてくれませんか?」 「…分かりました。  必ず…必ず伝えます」 「…ありがとうございます、リョウ君」  夜。  祭りの最終日。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加