1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「リョウ君」
ユウヒちゃんのお母さんの声が聞こえた。
優しい、声だ。
顔を上げる。
微笑んでいた。
ユウヒちゃんのお母さんは、微笑んでいたんだ。
「…確かに、貴方を恨んでいた時期もありました。
なんでユウヒなんだろう。
近くにいたリョウ君でも良いじゃないか…って。
…でもリョウ君は、犯人の逮捕に協力してくれたじゃないですか」
…確かに僕は、警察に犯人の情報を提供した。
その情報があったから犯人を逮捕出来たと、後に警察の人から聞いた。
「リョウ君は今の今まで、ずっと…ずっと苦しんでいたじゃないですか。
…リョウ君は、もう罰を受けています。
それに本当に罰を受けなければならない人は捕まり、既に死んでいます。
だから、リョウ君が苦しむ理由は、もう無いんですよ。
きっと夫も、そう言うと思います」
ユウヒちゃんのお母さんは微笑み、僕の頭を撫でる。
温かく、優しい手。
「もしリョウ君がまたユウヒに会う事が出来たのなら、私達は元気でやっていると、
…貴方の事を忘れずに前に進んでいくと、伝えてくれませんか?」
「…分かりました。
必ず…必ず伝えます」
「…ありがとうございます、リョウ君」
夜。
祭りの最終日。
最初のコメントを投稿しよう!