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僕は縁日に、一人で来ていた。
縁日街道の、始まり。
大きな鳥居に寄り掛かって、狐のお面で顔を隠した女の子が一人。
「お待たせ。
…それじゃ、行こうか」
僕がそう声を掛けると、女の子は頷いて、僕の手を握った。
冷たい、手だった。
そして僕と女の子は、縁日を回る。
人々の喧騒をかき分け、
電球の入った提灯の灯りの下、
歩いていく。
しっかりと、女の子の手を握って。
「食べるかい?」
女の子に買った林檎飴を差し出すと、女の子はそれを手に取り、狐のお面を少し上げて、嬉しそうに林檎飴を舐めた。
「美味しい?」
女の子はこくんと頷く。良かった良かった。
「そうだなぁ…他に行きたい出店とかある?
貯金はそれなりにあるから、どんな物でも大丈夫だよ」
林檎飴を舐めていた女の子はんー…と考える様に周囲を見渡し、射的の出店を見付け、一点を指差す。
その指先にあったのは、くまのぬいぐるみ。
「分かった。
すいません、一回お願いします」
小銭を射的屋のおじさんに渡し、コルクを受け取る。
銃のレバーを引き、コルクを詰めて、女の子が欲しがっているぬいぐるみを狙い、
引き金を引く。
当たった。
けれど、落ちない。
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