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特に二学期になってからというもの、こういう話題が増えた。
「絵麻は?誰か、好きな人とかいないの?」
「え、いや、いないし、そんなの」
ふいに自分に話題を振られて焦った。
「だってさー、久保ー」
にやにやしながら紗季が翔真をつっつく。
「は!?いや、なんで俺にふるわけー?や、ほら、そういう鈴原はどうなんだよ」
「私?私はねぇ~ふふふ…聞きたい?」
「あはっ、紗季、話したそうだね」
そういうことは、絵麻にはまだわからなかった。
――好きって、なんだろう?話したい、とか、一緒に出掛けたい、とか思うことなんだろうか?でも、それだと友達と変わらない。一体みんな、どうやって「好き」「付き合いたい」と自覚するのだろうか。
「あ、5時間目美術じゃん。そろそろ移動しようぜ」
翔真がそう声をかけると、紗季があからさまに残念そうに従う。
「まじかー。仕方ない、私の極秘話は温存しとくかぁ」
「紗季、極秘にするつもり、さらさらなくない?」
談笑しながら、授業に必要なものを用意して三人は教室を出た。
「美術って、今日は何やるんだっけー?」
「確か版画だろ、てか今手に持ってるその彫刻刀セットはなんだよ」
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