教室

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教室

 あの絵、は――  気になって授業の後にもう一度見てみたが、名前は書いていなかった。  一体誰が描いたのだろう。  去年、作品展に展示していたのと同じ人だろうか。確か、隣の小学校の児童だった。ということは、今は絵麻と同じ中学一年ということになる。あの時、名前をちゃんと見ていなかったことを後悔した。  それからというもの、絵麻はその絵のことばかり考えていた。授業中も、部活中も、気付くとそちらに意識が行ってしまっている。  美術部の人、なのかな・・・?でも、美術部に知り合いいないし、いきなり美術室へ行くのも、と思い悩ん でいる時、ふとある考えが頭をよぎった。 (そうだ、朝早くに教室に行ってみよう。  あの景色が好きなんだったら、きっと早く登校してるはず。それにたぶん一年なんだろうし、各クラス覗いてみたら、会えるかもしれない)  次の朝、絵麻は頑張って早起きした。  着替えてリビングへ行くと、お弁当の用意をしていた母親が驚いていた。 「あら絵麻、珍しく早く起きたのね。小学校の時はいつもこのくらいだったけど」 「うん、今日はもう行くね。行ってきます」     
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