輝 

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輝 

 ある一枚の絵の前で、朝霞絵麻(あさか えま)は足を止めた。 (知ってる、この感じ・・・)  それは朝早くの、まだ誰も登校していない教室の姿だった。  タイトルには「教室」としか書かれていないが、いつもクラスで一番に登校している絵麻にはわかる。白く鋭角に窓から差し込む光、反射する机、すっと動き出したばかりの空気―――  絵麻の一番好きな時間を切り取った絵。  それは本物よりも本物らしく、その清々しい情景を伝えてきた。  どうやら隣の小学校の、同じ6年生の子の作品らしい。  いつも絵麻が登校する時間には絵麻の学校には誰もいないが、こんなに近くに同じものが好きな子もいるんだ、と嬉しくなった。 「絵麻、どうしたの?」  それまで、館内をゆっくりと特に立ち止まることなく回っていたのだが、絵麻がついてこないので母親がこちらに戻ってきたようだった。  今日は母親と地元の市立美術館の、市内小学校作品展に来ていた。絵麻の方も、図工の授業で書いた絵が佳作に選ばれて展示されているので、それを見にやってきたのだ。ただ、自分の描いた特に思い入れのない絵よりも、今見た絵の方がずっと強く心に焼き付いた。 「もう絵麻の絵も見れたし、どっかで美味しいものでも食べて帰ろっか」 「わー、やったぁ!パンケーキ食べたい」  最後にもう一度、絵を振り返る。  美術館の高い窓から指す秋の光に照らされて、その朝の教室の絵は、一層輝いていた。
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