夏祭りの夜に

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「守山さんがそう言ってくれるなら、これからはもう少し笑うように努力するよ。」 ありがとう、と再び言われ、目頭が熱くなった。結機にブスと言われてフラれたって、涙なんて一滴も出なかったのに。 「あたし、本当は上谷さんに偉そうに言えるような人間じゃないんです。」 突然黙ったあたしを心配したのか、上谷さんがあたしの顔を覗き込んでくる。その顔を見ると少し心拍数が上がるのがわかっていたから、あたしはあえて、彼の方を見なかった。 「あたし、言いたいこと、すぐに口に出ちゃうんです。これを言ったら相手が傷付くかなってことは言ってないつもりですけど、知らずに誰かを傷付けているかもしれない。」 彼は、口を挟まない。黙ってあたしを見ている。 「それで、この間、同級生の男子のことを好きだと思ったから、すぐに告ったんです。」 「...すごい行動力だね。僕には真似できない。」 彼が敬遠を含んだ声でボソッと呟く。 「だけど、ブスだって言われて、フラれました。誰よりも仲良くしている友人だと思ってたので、ショックだったような気がします。」 「...それは、その男の子が...。」 「でも、あたし、全然考えてなかった。その男子が自分をどう見てるかとか、他に 好きな相手がいないのか、とか。自分の気持ちを、押し付けようとしただけだった。」 言いながら、自分の中の霧が、晴れていくような気がした。そうだ。自分勝手に行動しただけだったから、あたしは泣けなかったんだ。 「だから、あたしはフラれて当然なんです。...まぁ、ブスって言われたのは、ちょっと...。」 「僕が言ってもあれだけど...守山さんは、ブスじゃないよ。」 彼の言葉はその場限りの嘘のような気がしなくて、あたしは思わず顔を上げた。あたしを真っ直ぐに見た彼は、とても優しく、微笑んでいた。 「あれだけハキハキと人と関われるんだ。守山さんは、とっても素敵な女性だと思うよ。」 彼は少しも照れたような素振りは見せずに、あたしを褒める。 「もちろん、顔だって可愛い。守山さんの笑った顔は、ずっと見ていたくなるくらい輝いてる。」 彼が少しだけ照れた。はにかんだような笑顔を浮かべる色白の顔が、少しだけ赤い。 「...ありがとう、ございます。」 恥ずかしくて、ボソッと呟くだけになってしまったお礼に、彼はやっぱり優しく微笑んでくれた。
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