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二人とも食べ終わってから、またいつも通りに今日の日中にしてたこととか、面白かったこととかを話してた。
話に一旦の区切りがついてしまったのか、急にお互いに黙ってしまって初めて会った日に聴いていた穏やかな波の音が聞こえる。
どうしよう、なんか話さなきゃって思って、
『彼』の方を見たら、もう先に『彼』は真剣な眼差しで真っ直ぐに私を見ていた。
目が合って、反射的にバッと顔を逸らしてしまった瞬間、
「ー好きだ.」
背後から耳元の真隣で『彼』の声が聞こえた瞬間、私は既に好きな『彼』の匂いがする、程よく筋肉がついた躰の中心に収まっていた。
シチュエーションの理解は遅れてやって来て、私のちっちゃな脳みそでは重度のパンク状態だった。
えっ、なんで私は『彼』に抱き締められてるの?
好きって私を?? もうパンクしたままだったけど、これだけは絶対言いたかった。
初めに会ってから、隣から眺めているだけだった『貴方』に伝えてみたかった言葉。
「私も、貴方が好きです.」
ゆっくり振り返って『彼』を見ると、私の好きな顔は今まで見たことのないくらい頬を赤くして優しくはにかんでいた。
あゝ、私、本当に『貴方』が好き、って心がギュって締め付けられるような温かい苦しみを感じた瞬間、口元が急に暖かくなって、ふわっとした優しく柔らかな触感がした。
キス、された。
しかも、私は、ファースト・キスだった。
ファースト・キスはレモンのような酸味が効いているなかに少し苦味を感じるような、甘酸っぱいような、なんとも表現しがたい味がするのだと、なんかの本に表記されていた気がする。
でも、本当にキスをして解った。
本当のキスの味は、レモンのような苦味や酸味も、甘酸っぱさもない、ほんのり甘こい、
不思議なブルーハワイの味がする。
唇が離れてから、私はもう一度『貴方』の躰に収まった。
夢みたいに幸せだった。
今晩の別れ際、『貴方』は約束をしていかなかった。
でも私は、今の私達ならまたいつも通り明日、ちゃんと会えるよね、って思ってた。
でも、次の日の晩も、次も、その次も『貴方』はこの場所には来てくれなかった。
私達はその日から今日に至るまでの数年の間に関係は一切無くなってしまった。
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