夏が来た

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「えっ? なっちゃん、来るの!?」 「来るわよー。いいじゃない、あなた、どうせ彼氏と旅行だし。その後も彼の家に入り浸る予定でしょ?」 「別れた」 「えっ!?」 「だから、別れた。三日前に」 「……そう」  傷心のOL川久保美雪(かわくぼみゆき)は七月末日、自宅台所で母親から寝耳に水の話を聞かされた。  「なっちゃん」とは美雪の兄の娘、姪の川久保夏(かわくぼなつ)のことだ。世間的には叔母にとって姪やら甥は可愛いものだと聞くが、美雪にはそういった気持ちはさっぱり理解できない。  夏と美雪は仲が悪いから。というより、美雪から言わせてもらえば、夏の美雪に対する態度に難があるせいだ。 「そんなにお盆休みになっちゃんとバッティングしたくないなら、どこか旅行にでも行けばいいじゃない」 「えー。もう今からじゃ、友達も予定埋まってて、一緒に行ってくれるコなんか見つからないよ」 「一人旅でもいいじゃない」 「一人で旅行行っても、つまんないよ。って、なんか、孫の為に娘追い出そうとしてる?」 「嫌がってるのは、あんたでしょうが」  この会話の後、美雪は盆休み中に極力夏と顔を合わせないよう、避難先を会社の昼休み中や通勤途中に調べた。だが、苦手な一人旅でも魅力的だと思える旅行プランは、既に締め切られているか、高額。ならばと探した気軽なツアーでは一泊か二泊しか潰せず、夏と顔を合わせずに済ます為には役不足だった。  美雪は、覚悟を決め…諦めて、盆休みを夏の来る実家で過ごすことにした。
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