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「あ、美雪もいたんだ」
美雪の両親に駅まで出迎えられ、車で彼らの家についた夏が、居間にいた美雪を見ての第一声が、これだった。
美雪だって、別によろしくお願いしますとまでは期待していなかった。ここはあくまで両親の家だし、今後、彼女の身の回りの面倒をみるのは、美雪の母だ。
だからといって、この態度、叔母に対するものとは言い難い。美雪は、中学二年になった姪が、成長して叔母に対しての礼儀というものを身につけたのではと密かに期待していた。だが、美雪に対する夏の態度は、直近に会った彼女の小学六年生の頃と何一つ変わらず、美雪は早速がっかりさせられた。
しかし、親戚が来たというのにソファに寝っ転んで携帯をいじっていた美雪も、少し気を抜きすぎていたかもしれない。
美雪は、ソファの上に上げていた足を下し、社会人として身に着けた愛想笑いを顔面に纏って、夏に「なっちゃん、いらっしゃい」と言った。夏は無表情に美雪を一瞥した後、一言も返すことなく、台所の美雪の母に向き直ると、「これ、両親からです」と手土産を渡した。
そう、彼女はいつも美雪に対してこんな態度であった。
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