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蝉しぐれが始まった。
ああ、今年も暑く虚しい夏がやってきたんだな。
僕にとって夏はテンションが下がる季節なんだ。
朝、早く起きるつもりもないのに、
蝉の合唱で目が覚めてしまう。社会人一年目にして挫折をした僕。
それから二年目の夏だ。二十代半ばを無駄にしているかもしれない。
日銭を稼ぐバイトで生活は、何とかしている。そんな僕は、一般的にみて落伍者の烙印を押される存在だろう。
だとしても、人生の目標とかー大きな考えが湧いて来ないんだよ。
一応、夏が終わり、陽射しが和らぐ頃になると、前向きに自分の事を考えるようになるんだ。興味のわく分野の勉強を始めてみたりする。資格取得を目指してね。
秋は、いい。冬もいい。その頃にある試験は合格するんだ。というか、僕に向いている感じ。
春からだんだんと、やる気が失せ始め、夏になると死に絶えたミイラのように殻に閉じこもってしまう。
若いのにって?
違うよ。僕は何年経っても二十代半ばのまま。
そう、「僕」が生きていた頃はもうすでに過去なんだ。
終わりの記憶が夏の虚しさを成仏させてくれなくて。
夏が来るたび、思い煩う僕の分身。もし、僕に会ったらサヨナラのキスをしてね。
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