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お母さんが近い未来に再婚するとしても、私は別に反対したりする気はない。和斗さんを父親にしろと言われてもできないし、家族と思えと言われても難しい。けれどそれは、私の問題だ。
お母さんの人生が、私のお母さんとしてのものだけではないように、私の人生だって、お母さんの娘としてのものだけなわけじゃない。
岡野だろうと笹木だろうと、ただひとりの私としての人生が、私にだってあるのだ。
誰をどう思うかも、誰とどう過ごすかも。それは全部、他の誰でもない私の両手の中にある。
ジリジリと暑い日差しが容赦なく照りつけて、命の限り蝉が叫び続ける。
温い空気を送り込み続ける喫茶店で、甘ったるいほどのミルクセーキを喉に張りつかせながら、お父さんの向かい側、窓際の席へと腰かける。
私の夏は、これから先も、そうして始まる。
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