第1章 雪だるま

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そう言って私の主人は家に帰ってしまわれた。 (まさかこんな近くにいたとは…) 主人が1人で遊びに出かけたことに気がついた時には遅かった。 帰りが遅いから町中を探し、ほかの猫達にも探させたが、何しろこの暑さだ。 無理を言う訳にもいかず、私でさえも 倒れかけていたところ、目の前に喋る雪だるまが 現れるとは…。 (…思えばあの雪だるまはよく身を捧げる覚悟を してくれたものだ。) 生きているものならば生に対し多少の執着は あるだろうに…と私はそう考えつつ 今は何も無い後ろを振り向く。 (なんにせよ主人が助かってよかった。 主人に代わって礼を言わせてくれ… ありがとう、名も無き雪だるまよ。) 私はそう思い、頭を下げると 振り向き主人を追って歩き出した。
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