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うな顔をさせるわけにはいかない。
「ねーねーねーねー!浮き輪で首吊りできるよね!これにくっついてる紐をどっかにかけたらぷらーんって」
いとこがきた。大きくなったいとこが。
相変わらずおれの言葉に辛辣な言葉を返してくるねえちゃん。大好きなねえちゃん。
壊れちゃったねえちゃん。
ばあちゃんがまた呟いた。
「何回言っても聞き入れてくれないものね。貴女のせいではないのよって。……木に下がった浮き輪に気づかないで、あの子が亡くなってしまったのは貴女のせいではないのよって。あれは遊んでいただの事故だったんだもの」
どこか遠くを見ながらの、ばあちゃんの虚ろな瞳。
おれはだから。
ばあちゃんの顔は見ない。
ねえちゃんの顔だけを見る。
毎年。毎年。おれは同じことをねえちゃんに言う。
ねえちゃんが死なないように。
ねえちゃんがバカだって呆れる死にかたを
提案する。
ーーーー五年前、とある田舎にて。
山で遊んでいたいとこふたり。そのうちの少年の方がふざけて木で遊んでいたところ、謝って転落し、不幸にも持っていた浮き輪が原因で亡くなった。
風の噂である。
身内たちは一緒に遊んでいた少女を言葉を捲し立て、責めて責めて責めて。
少女は精神を壊し入院したらしい。
退院した今も、尚。精神に安定は見られず。
特に夏になると独り言が増えているらしい。
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