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「ヤバい……田舎ナメてた」
だらだらと続く田んぼ道を真昼の太陽が焦がしている。
右には田んぼ。左にも田んぼ。……見渡すかぎり、田んぼしかない。
「せめて帽子くらいかぶってくればよかった」と思いながら、首に張り付く髪の毛を払う。
汗だくでタラタラと歩くアヤの傍らを1台のバイクが優雅に追い抜いていく。
……かと思ったら、10メートルほど先でバイクが停まる。
運転手がヘルメットを外しながらアヤの方を振り向いた。
「もしかして、アヤ……!?」
ヘルメットを胸元に抱えた運転手が、アヤを見つめている。
「……タカ?」
「おぉ、久しぶり!」
アヤに向かって探るような目を向けていた男の顔が一気に緩んだ。
タカは高校時代の同級生だ。
目尻の皺は少し増えたけれど、タカの笑顔にはあの頃の面影がたしかに残っている。
「おい」
タカがバイクの向きを変えて、アヤの元へやってくる。
「お前、死ぬぞ」
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