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赤い縁取りの長い金の絨毯が敷かれ、それを挟み両家の家族が並んでいる。
ザイードはアレフに言った。
「俺はアレフもターミルも家族だと思っている。古いしきたりなど気にするな……父の隣で儀式を見守ってくれ」
「──……」
「いや…見守っていて欲しい…」
「それはさすがに……」
頭をさげたままアレフは戸惑いを見せる。
ザイードはもう一度念をおした。
「これが王としての最初の命(めい)だ──」
「──…!…」
目を見開いたアレフだったが、すっと顔を上げた。その表情には微かに涙が滲んでいる……わけでもなく、いつもの淡々とした口調でアレフは応える。
「畏まりました。では直ぐにお席へ向かいます──」
短く会釈をしたアレフは再び顔を上げるとふと、目尻に微かな笑みを覗かせた。
ザイードも思わず表情を緩め頷き返す。
その仕草だけで互いに解り合ったのだろうか。アレフはムスターファ家が列をなす席に向かうと、イブラヒム先王の後ろに腰を落ち着けていた。
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