番外~希望の光 新王誕生~

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・ 戴冠式を行った先程の広間と違い、ここは縦に長い。 このまた奥にある神殿、ここはその神殿に続く“禊の間”として造られた広間だからだ。 金の長い絨毯を挟み、イブラヒム王家と愛美の家族が向かい合い座っている。 直美や太一の前には王族の正装を纏ったザイードの兄達。アサドを覗いた王子達が兄弟が勢揃いしていた。 皆、白で統一された正装で涼しそうではあるが、何だか圧倒されてしまう。 木下家一同、日本とは全く違う雰囲気にずっと緊張しているようだ。木下家は日本式の軽い服装に身を包んでいた。 イブラヒム先王は腰掛けたまま、そこに揃った皆が席を立ちザイードと愛美を迎える。 婚姻の儀式が今、厳かに始まろうとしていた。 その様子はどこかのテレビで流れたように派手な演出もなく、それはそれはとても静かだった── 前を進み長い絨毯の真ん中に立つと、神殿の間の大きな扉の方を向いて、ザイードと愛美は祈るように両手を組んだ。 大昔からこの土地に伝わる教えや言い伝え、そして神を称えた数々の誓い。 静寂の中、聞こえてくる経典の読経。読み上げていたその声は少し嗄れた深みのある落ち着いた響きを持っていた。 花婿であるザイードの父、イブラヒム先王だ。 それに続き、読経の後を追って参列していた皆がイブラヒム先王の言葉を復唱する。 様々な想いの込められた言葉が並べられ、ザイードと愛美も皆と一緒に呟くように後を追った。
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