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「あ、おはようございます」
いた。
午前8時、駅までの道にあるごみ捨て場で、ごみの日だけ会う女性。
緩やかにウエーブのかかった焦げ茶の髪も、凜とした姿勢も、朗らかな笑顔も。
――全部、亡くなった妻に似ている。
「おはようございます。今日は可燃ゴミの日でしたか」
「そうです、夏は生ゴミが臭うので困ってしまいますね」
最近この町に越してきたばかりで、齋藤さんというらしい。聞くところに依ると、彼女は夫を亡くし、自分の故郷であるこの町に、子供を連れて帰ってきたらしい。
失礼な話だ。俺は齋藤さんと妻を重ねては、あわよくば、なんて思ってしまう。
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