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彼と話している内に、もっと話したいという思いは募る一方。私の向いている方からしか見えない、役場の時計の針は無情に動いて、彼の乗る電車の時間が近づく。
「いってらっしゃい、熊谷さん」
その言葉で彼、熊谷さんを送り出すこの瞬間がたまらなく寂しくて、愛おしい。
見送る彼の頭が少し上を向いて、青空を見上げているのがわかる。私も同じように上を向いて、彼と同じ時間を、感情を、共有している気分になる。
――欲を言えば、ごみの日だけじゃなくて毎日会いたい。
そんな淡く青い思いは、青空に浮かぶ雲の中に隠してしまおう。それでも、彼が見つけてくれたらいいな、なんて期待を込めながら。
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