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結論から言って、藍田は佐藤の遁走をその手で捕まえることはできなかった。だが逃げ切られたというわけでもない。いま二人は中庭へと舞い戻り、肩を並べて再びベンチに腰を下ろしている。
余談だが、ベンチに戻ってくるとそこにはビニールに包まれたままのパンと紙パックのコーヒーが新(さら)のまま放置されていた。それは、藍田がさっき購入していた物だということをその光景を目の当たりにするまですっかり失念していた。
二人は現役のサッカー選手だったから、校内を駆け回る程度では体力の消耗など如何程のものでもない。だが場所が悪かった。追いかけっこの舞台を校舎の中に移動したのが運の尽きだった。廊下を走り回るその様は教師に看過されるものではなかった。すぐさまに呼び止められ、二人揃って叱責を喰らってしまい、その頃には藍田の気持ちもすっかり冷めていた。
そうして公明正大な追走劇は望まぬ形で幕を閉じた。
「思わぬ邪魔が入ったぜ」
佐藤は未だに文句を喚いていた。追いかけられていた事実は何のその、それより先公に責められたということが余程不服であるらしい。
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