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「佐藤こそ、何しにここに」  それこそが問い質したかったことだった。佐藤と言えば、昼休みは教室から出ることもなく、寝(やす)むことを優先すると思っていた。事実昨年同じクラスだった頃は、余程のことがない限り彼はほとんど机に身体を倒していた。だから彼を校舎の外で見かけるとは想像だにしなかった。しかもよりによって、こんな人気のない中庭に現れたことは藍田を殊更に驚かせていた。 「廊下の窓からお前を見かけたからよ」 「ふうん」 「藍田はいつもここで飯食べてんのか?」 「いや、偶にだよ」 「ひとりでか?」  その一言は藍田の胸を僅かに締め付けた。  藤崎――とある先輩を待っていた、とはやはり言いづらかった。  藍田は紙パックのコーヒーを手に取り口を開けた。次に備え付けられているストローを外すと、それを開かれた口に差し込んで一口飲んだ。一旦落ち着きたかった。 「そういう時もある」 「まあ、いいけどよ」  佐藤はそれ以上その話題を続けようとはしなかった。
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