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 いつの日かの葛城の時と一緒だと思った。藍田は人の目を欺くことに関しては才能がない。彼がはぐらかそうとしていることを、佐藤は正しく理解した上でその話を続ける必要はないと判断したのかもしれない。 「何か、用があったんじゃないのか?」  佐藤のことだ。そんなことを訊く為だけにわざわざ中庭へ来はすまい。 「ちょっとだけ面白そうだと思ったんだ」 「何がだ?」  言っている意味を解り兼ねて、藍田は佐藤の顔を窺った。口角を吊り上げ、どことなく楽しそうな、嬉しそうな、そういう雰囲気を感じさせた。 「球技大会だよ」  藍田は鼻で笑った。佐藤がそう言ったものに、興味を懐く質(たち)だとは思いもしなかった。 「珍しくやる気でもあるのか?」 「へっ、珍しくは余計だよ――」佐藤は組んでいた脚を解き、前屈みの姿勢を取った。そして次の声は低く軽妙なそれだった。「――今日の体育観てたぜ。お前らのサッカーを」  そう言って、佐藤は藍田に目を合わせて来た。挑むかのような好戦的な眼差しだった。それで藍田は合点した。要するに、藍田と勝負することを彼は楽しみにしているのだ。今日はそれをわざわざ伝えにやって来たのだ。
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