19人が本棚に入れています
本棚に追加
「悪いが負ける気はしないぜ」
「確かに良いチームワークだった。ありゃ一筋縄じゃいかんだろうな」
藍田は眉を顰めた。賞賛こそしてはいるが、佐藤の言葉は不穏な響きが孕んでいた。負けるつもりはない、そういう風に嘯いている気がした。
佐藤は立ち上がり、泰然とした視線を藍田に向ける。
――宣戦布告。藍田はその眼差しの意図を理解した。居住まいを正し、彼もまた表情を引き締める。その声ならざる宣言に応えるように。
「佐藤」
「またな、藍田」
藍田の表情を検めて、それで満足したのか佐藤はそれだけを言い残して去って行った。
佐藤潤。奴のクラスの実力をいま推し量ることはできないが、彼がいるという理由だけで油断ならない。だが、何より――
佐藤と勝負ができるというその実感が、藍田の中で沸々と沸き起こり彼をみるみる滾らせつつあった。
最初はさして興が乗らなかった球技大会だったが、もはや事情が変わった。佐藤の言う通り、確かに面白くなりそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!