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この世に生を受け、産まれた僕は
たった3つの歳に病気になって、ショクブツニンゲンってのになってしまったらしい。
物心がついて気付いたら病院ってとこにずーっと居るんだ。
そんな僕が知っているのは、お父さんとお母さん、先生に看護師さんの顔。病室の白い天井に壁。窓から見える空。
それと、僕が鯨になりたいって思うようになったきっかけの、鯨の載った絵本。
鯨の載った絵本はね、僕が5つのときにお母さんが1度だけ読み聞かせてくれた絵本なんだ。
皆は、鯨って言ったら何色を浮かべるの?
…僕はね、青色なんだ。だって、絵本に出てきた鯨は青色をしていたから。
本当の鯨がどんな色をしているのか僕は知らないけれど、きっとあの絵本みたいに、綺麗な色なんだよね?
…僕が鯨になりたいって、思ったのは
絵本の中の鯨が、自由だったから。
大きな体で
広いひろーい海の中を優雅に泳ぐんだ!
…そして体の動かない僕は毎日考える。
退屈で退屈で仕方の無い病室の窓から時々見える青い青い空。
あの空には鯨が泳いでいるんじゃないかって。
あの青い身体で、優雅に泳いでいるんじゃないかって。
考えていたら、僕は早く鯨になりたくて仕方がなくなる。
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