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盆踊り
盆休みを利用して祖父母の家に止まりに来たのだが、夜、近くて開かれる盆踊りに行こうと誘われた。
踊りなど踊れないと断ったが、教えてあげるからと熱心に言われ、また、可愛い浴衣も用意されていたので、それにほだされて行くことになった。
櫓を囲む形で輪になり、踊りながら前進する人達の間に祖母と一緒に入り込む。
最初こそ踊り方教えてくれたが、足が疲れたと、祖母はすぐに輪を抜けてしまった。
見よう見真似で何となくなら周りに合わせられるけれど、絶対私は変な踊り方をしている。恥ずかしい思いをする前にさっさと踊りの輪を抜けよう。
そう思うのに、何故か体が自由にならない。手は踊りの形で空を切り、足はひたすら音楽に合わせて前進する。
さっきまでそれなりの人数がいたのに、踊りの輪がどんどん小さくなっていく。こんな状況で下手な踊りを踊るのは恥ずかしいから早くここを離れたい。
どれ程そう願っても見えない力に押し止められ、やめられない踊りを続けた結果、最終的に櫓を取り巻くのは私を含めてたった三人になっていた。
三人しかいないから、前や後ろというには間が空きすぎているけれど、それでもあえて前後を決めるなら、私の後ろにいるのは浴衣姿の女の子。前にいるのは…浴衣を着ているらしい男の人のようだけれど、性別はなんとなく判るのに他は曖昧ではっきりしない。
曲と太鼓の音に合わせ、私達は等間隔を保ったまま前進する。その距離がふいに変わった。
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