プロローグ

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同じボルトアクションでも敵は針打式。紙製の薬莢を一発づつ込めている間にこちらは装填された五発の弾丸を撃つことが出来る。 さらに四丁配備されたベルト給弾式の軽機関銃。負ける気がしなかった。 丘陵の上から見下ろせば真紅の大群が密集し、幾重にも列を成してジワリと距離を詰めてくるのが嫌でも目に映る。 隠しようのない威圧感。この光景は今でも恐怖を感じる。しかし一方でキシワダ準伯爵の提唱したコソコソ隠れる全く華のない迷彩服に最初こそ不満だったが、今となればその意味がよく分かる。 何処に潜んでいるか分からないのも、敵からしたらこれまた恐怖。 彼我の距離四百。敵がそこまで迫った報を受けたロイドは銃を構えた。 いよいよだ。兵には己の発砲を号令に斉射するよう指示をしている。 握りこむ指が引き金を引いた。撃針が金属薬莢の底部にある雷管を叩き、込められた無煙火薬が驚異的な速度と威力を持って燃焼する。 瞬間的に膨張したガスは六ミリ経の鉛弾を銃身から弾き出し、射手であるロイドに大きな音と反動で戦闘の開始を伝えた。 弾丸は軸回転をしながら直進、最初の獲物に確かな精度をもって食らいつく。衝撃によって体内で変形した弾丸は心臓を掻き潰し、瞬時にその命を奪う。膝から崩れ落ちる敵兵。 直後、戦場に響く無数の銃撃音。     
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