転移

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 日本の特徴とも言える山々の連なる地形。秋の気配に少しづつ色付き始めたそんな山々を貫くように一本の白い線が時速二百キロを超える速度で駆け抜けていく。 スニーカーのようなノズルで空気を切裂き突き進むE700系新幹線の車内にて、岸和田道利は重いため息をついた。  数年前、といっても大学卒業時から数えて四年前からわだかまりのある父のことを思い出すと、否応がなしに気が重くなる。 「欠伸がとまらん」  多少のストレスを感じると欠伸が出る体質上、仕方がないと分かりながらも道利は独りごちた。  新横浜の駅から何度かの乗り換えを行い、実家の最寄り駅の改札を出る。うっすらと朱色をふくみ始めた空にポツリと浮かぶ橙の雲。その向こうに霊峰大山が堂々たる黒い影を落とす。 この光景をみると帰ってきたという感慨深さが道利の身を支配する。  いつもならバスかタクシーで行くところを、この日は一人トボトボと自らの足で家路についた。 「ただいま」  気持ち的に重い足取りながらも、着いてしまった家の鍵を開けて家に入る。     
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