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『左様でしたか!予定をつけて参りたいと思います。とても楽しみです。』
「ほんで今日のはな、告知も何も、ただの取材だからな。週末のも、正式に出るというものでもないし。難しい話なんだよ。」
『そうですねぇ。仕方ないとはいえ、直前に知ると都合がつかなかったり、しますからねぇ。後から知っても、それでまたジタバタ泣くってもんです。教えてくださらなくっちゃあ。』
「はは、うむ。がんばるよ。」
『ありがとうございます。
もしかして、そろそろ、お時間よろしいのではありませんか?
私そうと決まれば、元気に、次の機会に備えられます。お暇いたします。』
裾を払い、姿勢を正してお辞儀をした。
「うむ。またな。」
『取材の件、掲載まで、ずっと楽しみにしておりますからね!
では、また。左様なら。』
彼が扉の中へと進む姿を後に、夕暮れを背にした私は、自分の影ぼうしだけを踏んで歩いた。
彼から伸びる影は無かった。
これは以前からだったのだろうか。
彼がもう、此方には常駐いからなのだろうか。
家に向かう途中には、蓮の群生地がある。蓮の葉が夕焼けに煌めいている。明日もいくつかの株が、花をみせることだろう。
Fin.
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