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まだだいぶ空気は湿気を孕んでいるが、やはり太陽の下でお弁当を広げるのは気分がいい。明歩たちも中庭に来るかと思っていたが、今日は2人の姿は見当たらなかった。学食に行ったのだろう。
私たちは数少ない2人掛のベンチに腰を下ろし、
浅野くんは私のお弁当の3倍はありそうなお弁当箱を広げた。
「向坂たちいないな」
「学食行ったんじゃない?」
「俺、アイツ苦手だから助かった」
アイツ、というのは柚木くんのことだろう。
「ああ、浅野くん苦手だもんね」
「向坂の彼氏だから悪くいいたかないけど、苦手だ。なんつーか、トゲトゲしてるよな」
「それは私たちが邪魔したからだよ、多分」
別に擁護するつもりはないのだが、浅野くんは私の顔をじっと見てきた。
「な、何?」
「いや、アイツ感じ悪いけど、顔いいじゃん。茉白もかっこいいとか思ってんのかなって」
私は一瞬、口籠ってしまった。
だって、私は彼に一目惚れをしたくらいなんだから。それよりも
「……思わないよ。って名前で呼ばれるの恥ずかしい」
「間があった! 名前で呼ばれるの嫌か?」
「嫌じゃないけど、恥ずかしいの! それと人間、顔じゃないよ。私は浅野くんがかっこよくみえるよ。今は」
「今はってなんだ、今はって。茉白も俺のこと名前で呼んでみて?」
そこではたと気がついた。
「そういえば、浅野くんって下の名前なんだっけ?」
「は!? お前マジで言ってる?」
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