5.知らなかった想い

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5.知らなかった想い

 どくどくと心臓が脈を打つ。  アンケート用紙の端だけを千切って制服のポケットへねじ込んだところで、午後から受け付け担当の部員がやって来た。 「あれ? 相澤さんひとりだったんだ。ごめんね」  2年の先輩がそう声を掛けてくれたけれど、私はどこか上の空だった。  明歩と別れた? なんで?  だって、2人で夏祭りも来ていたし、さっきだって――。  全くわからない。  一体、どういうことなんだろう。  明歩に聞きたい気持ちと、柚木くんに問いただしたい気持ちで、時間がゆっくりと進むのがもどかしい。  午後4時、片付けと明日の準備を終えると私は教室へ急いだ。 「明歩!」  丁度帰ろうとしていた明歩に声を掛けると明歩は笑顔で手を振って来た。 「浅野くんならトイレ行ってくるから教室で待ってってって言ってたよ」 「あ、うん。ありがとう。あの、明歩……」 「ん?」  どうしよう。  聞くべきか、聞かないべきか。  迷っていると明歩が頭の上に手を乗せて、視線を合わせてきたので、思わず視線を泳がせた。 「どうした? なんか浮かない顔してるけど」 「そんなことない……けど」 「ならいいけど。じゃあ私柚木くんと待ち合わせしてるから行くね。また明日!」     
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